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COVID-19による混乱に加え、英国が欧州連合(EU)から離脱したことにより、欧州における治験サプライチェーンはさらに複雑化しました。2021年1月以降、EUと英国は異なる法規制のもとにあり、製剤を販売するときは各市場に適用される要件を満たさなければなりません。
英国がEUと締結している貿易協力協定では、製剤製造施設のGMP(製造管理・品質管理基準)査察は相互承認の対象となりますが、Qualified Person(QP)による出荷や製品バッチ試験については相互承認について規定されていません。一方、英国では、承認国、すなわち現時点では欧州経済領域(EEA)内の国で行われたバッチ試験及びQP認証は、受け入れ可能とされています。
2022年1月より、承認国から英国の治験実施医療機関に搬入されるすべての治験薬について、英国QPによる完全な監督が義務付けられます。これまでどおり、EEAでは、最終製品の各バッチについて、EEAにおける治験での使用や販売の前にQPによる認証が必要です。しかし、英国に拠点を置くQPは、今後、EEAで使用される治験薬バッチを認証することはできないため、英国のQPに業務を委託している企業は、EEAでの製品販売を継続するには、これまでのプロセスを大きく変更しなければなりません。
QPサービスの規制環境の変化がもたらす影響について解説した最近のオンラインセミナーでは、サーモフィッシャーのHarry Berlanga(Senior Director of Quality、EMEA)とAlessandro Barbato(原薬、製剤および無菌製剤QP)が、新ルールのもとでQP要件を満たし、サプライチェーンのリスクと治験への支障を最小限に抑えるためのキーポイントとして、以下のアドバイスを提供しています。
Berlangaは、「欧州外に拠点を置く製薬企業は、欧州のGMP要件、そしてEUおよび英国のQPの役割と責任をしっかりと理解しなければなりません。そのためには、サプライチェーン品質契約およびQP-to-QP契約を見直し、常に最新の情報を反映しておくことが極めて重要です」と述べています。
また、適切な医薬品受託製造開発機関(CDMO)との提携が重要であるとし、その条件として、各新薬候補・プロジェクトを理解できる技術的・科学的知識を備えていること、規制環境の変化に対応できる深い規制対応経験を蓄積していること、社内に英国およびEUに拠点を置くQPを有しており、両地域における製剤出荷とバッチ認証に対応でき、英国のEU離脱に伴う治験や販売に対するリスクを低減できることを挙げています。